2009/08/24

Chopin i jego europa

8月16~31日まで、ワルシャワではChopin i jego europa(ショパンと彼のヨーロッパ)と題した音楽祭が行われています。素晴らしいアーティストの演奏が毎晩繰り広げられ、ヨーロッパならではの雰囲気を楽しむことができます。音楽祭のプログラムはこちらhttp://en.chopin.nifc.pl/festival/edition2009/programme

キャンセルが心配されたマルタ・アルゲリッチも、一昨日無事会場に現れ、ステージに出てきた瞬間から観客は沸いていました。昨日は、彼女のCDを聴いたときから鮮烈な印象のあった、Ravel(1875-1937)のピアノ協奏曲ト長調を聴くことができました。グリッサンドやトリルがシルクのように滑らかで、情熱的でありながら繊細な美音がちりばめられた演奏に、とても惹きつけられました。オケの管楽器がとくに難しいことで知られるこの曲ですが、彼女のものすごい速さと奔放な演奏に、ステージ上のすべての奏者が本気で演奏しているのが伝わってきて、熱気あふれる演奏でした。また、ネルソン・ゲルネルさん(以前ブログでも紹介した)が、アルゲリッチの前に、あまり知られていないGiuseppe Martucci(1856-1909)作曲のピアノ協奏曲を演奏されましたが、超絶技巧でありながら、それだけではないこの曲の特徴をとらえた素晴らしい演奏でした。

ワルシャワで行われるこの音楽祭は、なんといっても「ピアノ」がメインのフェスティバルです。ショパンという人が、彼以降のピアノ作品にいかに大きな影響を与えた存在かということ、またポーランド人がショパンを誇りに思い、大切にしていることを肌で感じることができます。


ワルシャワに留学して約1年、私はここに来てよかったと思っています。

2009/08/15

Chęciny


先日、友人カップルがドライブに誘ってくれたので、ワルシャワから車で2時間くらいの、Chęciny(チェンチニィ)という所へ行ってきました。

小さな街ですが、丘の上には廃墟となった城跡があり、観光スポットになっています。ちょっと急な山道を登ると、街はもちろん、平たいポーランドの土地のずーっと先まで見渡せます。もう、夏も終わりに近付いていると感じさせるような、涼しい風がふいていました。遠くから見ると煙突のように見える円柱も、昔は先にとんがり屋根のある塔だったそうですが、面影がないので想像の世界です。



その後、MUSEUM WSI KIELECKIEJ (キエルツェ地方の田舎博物館)に行ってきました。ここはポーランドの昔ながらの生活が再現されたテーマパークのようになっていて、教会、学校、裕福な地主の家、牧畜小屋、馬車置き場、お店や風車など、当時の生活がわかるような形で展示されています。薬屋さん(右の写真)はもちろん、普通の家にもさまざまな種類の薬草が常備してあって、先人の知恵を感じました。便利な世の中に慣れた現代に生きる人にとって、素朴な生活は物足りなさや不便さを感じるものかもしれませんが、先人の築いてきた知恵の積み重ねが今の生活につながっていることを忘れてはいけないなと思います。ポーランド人がこの風景を見たら、日本人の私が見るのとは違った感覚の、懐かしさを感じたりするのかなと思いました。



この風景、絵本に出てきそう!

そんな世界に入り込んだような時間でした。






青空が近くて気持ちいい!!

Munich 久しぶりの再会

ザルツブルクからはミュンヘン経由でワルシャワに戻ったので、途中のミュンヘンでちょっと寄り道して友人に会ってきました。2年ぶりくらい?なのに、全然そんな感じがしなくて、会った瞬間からはしゃいでしまいました。

ミュンヘンに行ったら1度は行ってみたかったピナコテーク(博物館)に行ってきました。アルテ、ノイエ、モダンがある中で、今回はアルテとモダンに行ってきました。アルテ・ピナコテークは広い空間にかなり充実したコレクションで、1日中いられそうでした。
モダン・ピナコテークは20世紀の絵画はもちろん、建築やインスタレーション(従来の彫刻や絵画のジャンルに入らない作品やそれを配置する芸術的空間)など、面白い試みもたくさんあって楽しめました。
ミュンヘン音大も近くにあり、近くに博物館や美術館、緑がある環境は芸大にも似ていて、とってもいい所だなと思いました。 街中に出ると、レジデンツやバイエルン州立歌劇場など歴史のある建物と共に、洗練されたショップが立ち並んでいて、都会的な街だなーと思いました。古い建物を利用したモダンなお店がたくさんあるのを見ると、ヨーロッパっぽい雰囲気だなと思ったりします。
藍ちゃんにはミュンヘンで美味しいお店をたくさん教えてもらいましたが、中でも“ビクトリアンハウスカフェ” http://www.victorianhouse.de/は、ケーキと紅茶がすごく美味しかったです!ただ大きくて食べきれなかったのでワルシャワまでお持ち帰りに。。。こちらのケーキはどこに行っても日本の3倍はある気がします。。でもやっぱり美味しそう!の気持ちから頼んでしまうのです。


ミュンヘン、またいつかゆっくり行きたいです。藍ちゃん、ありがとう!







2009/08/14

Salzburg音楽祭 Wiener Philharmoniker


この日は、夜のコンサートまでザルツブルクの街をいっぱい観光しました。まずはこの街のシンボルでもあるホーエンザルツブルク城塞へ。ケーブルカーで一気に上がります。メンヒスベルクとはまた違った角度で街全体が見渡せて、とっても綺麗でした。 城砦の中を見学し、麓まで降りてきたとき、急な雨に見舞われ、この日に限って折りたたみ傘を忘れたので、大聖堂まで行ってしばらく雨宿りすることに。。



大聖堂の中に入ると、見上げるほど広く高い天井、どうやって描いたんだろうと思うような天井絵画や彫刻の数々。文化の違いがあっても、教会の荘厳さにはいつも圧倒されます。モーツァルトはここで洗礼を受け、ここのオルガンも弾いたそうです。上の階にあるドーム博物館に入ると、オルガンの間近まで行くことができました。
雨がやむのを待っている観光客がここにはたくさん集まっていましたが、あいにく夕方まで雨は降り続きました。




しかしこんなお天気だからこそ、室内観光は十分楽しめました。近くのレジデンスギャラリー、同じ場所でひらかれていた個展、そして向かいにあるザルツブルク博物館にも行ってきました。ザルツブルク博物館は、モダンで芸術的なプレゼンテーションがされていて、ヨーロッパ各地の博物館と比較しても最高レベルのものだそうです。多くのロマン派の画家や作家を魅了してきた美しいザルツブルクの、歴史や経済発展コンセプトまで、面白く見学することができました。



雨も小ぶりになった頃、モーツァルトクーゲルン(チョコレート)のお店“フュルスト”へ。お店で1つ買って食べてみておいしかったので、おみやげに買ってみました。その後、モーツァルトやカラヤンも訪れたというカフェ“Tomaselli”(トマセッリ)で、カフェオレとあつあつのオムレツ、苺のタルトをいただきました、お腹も心も満足!




今夜のコンサートはウィーンフィルでした。音楽祭のメイン会場である祝祭劇場へ行くと、日本人が多くてびっくりしました。プログラムは、Bergの弦楽のための抒情組曲より3つの小品、アルテンベルク歌曲op.4、休憩をはさんでBrucknerの交響曲第6番A-Durでした。指揮者のEsa-Pekka Salonenさんは、袖から舞台に出てくるときからもう音楽が始まっているかのように指揮棒を揺らしながら歩いてきたのが印象的でした。言うまでもなく最高のオケですが、音と音の間の休符で響くハーモニーがピタッと合った時は、本当に息をのむ瞬間でした。最高の奏者が最高の情熱で演奏した時の音楽は、聴いているのではなく今を生きている感じがします。そうゆう出会いを求めて、演奏会に行くのかもしれません。

ピアノで表現をするとき、楽器の音色を想像すると自然に音がつくれたりします。今回聴いた美しい音たちが、私の音のパレットに活かされますように。。。

2009/08/13

Salzburg音楽祭 Mozart!!

翌朝、また街中を散歩しながらMozart-Matineeが行われるモーツァルテウム大ホールに向かいました。プログラムはオールモーツァルトで、6つのドイツ舞曲KV571、リンツ交響曲C-DurKV425、休憩をはさんで後半が、フリーメイスン葬送音楽c-Moll KV477(479a)、ピアノ協奏曲Es-DurKV482でした。Alexander Lonquichさんが指揮とピアノ演奏(弾き振り)、オケはザルツブルクモーツァルテウムオーケストラでした。左の写真が会場、ロココ調の素敵なホールですよね。オケはバランスのいいアンサンブルで、とくに木管奏者が素晴らしいと思いました。このピアノ協奏曲は、私が初めて取り組んだモーツァルトの協奏曲で、思い出深い曲でした。Alexander Lonquichさんの演奏は即興的なアイデアに満ちていて、とても新鮮でした。


演奏会の余韻で軽やかな気持ちになったまま、会場から歩いてすぐのMozartの住居に行ってきました。ここは、モーツァルトが17歳の時に生家が手狭になったため引っ越しをし、多くの作品が生まれた場所です。フォルテピアノや自筆譜、作曲の勉強に使った本などがとても興味深かったです。ちゃんと日本語のオーディオガイドが用意されていて、母国語があるだけでありがたみを感じてしまいます。


モーツァルトの生まれた家は、旧市街のゲトライゼガッセ通りにあります。 有名な肖像画や作曲で使われたフォルテピアノ、髪の毛(!?)まで、興味深く見学しました。モーツァルトが実際に生きていた人だということを、こうゆう場所に来るとあらためて実感できます。ファクシミリ版の楽譜や大好きなピアニスト、クララハスキルのモーツァルトのCDを買って、帰ってからの楽しみもできて嬉しくなりました。


散歩をしていると、ちいさな発見がいくつもあって楽しいですよね。ザルツブルクの街は、地図にはのっていないような、通りから通りに抜ける小道も、とても趣があります。建物と建物の間に、こんなかわいい場所も見つけました!


この日のハイライトは室内楽のコンサートでした。ヴァイオリンはMark Steinbergさん、チェロはClemens Hagenさん、そしてピアノは内田光子さんです。Mozartのヴァイオリンソナタe-Moll KV304から、Webernのヴァイオリンとピアノのための4つの小品op.7とチェロとピアノのための3つの小品op.11、MozartのピアノトリオG-Dur KV564、休憩をはさんでSchubertのピアノトリオEs-Dur D929。よく考えられたプログラミングですが、前半をひとつのまとまりとして聴かせるように、曲間で拍手をさせない緊張感が流れていて、さすがだなと思いました。とにかく、夢のような音が聴こえてきて幸せでした。。。Schubertはクライマックスにふさわしい熱演で、演奏が終わった瞬間から、ブラボーの嵐。アンコールの演奏の最後の1音が消えた瞬間、「アリガトー!」と会場から聴こえ、私も胸がいっぱいになりました。お客さんがこんなに喜ぶ演奏会ができるって素晴らしいなと感動しながら、私のMozart尽くしの一日は終わったのでした。

Salzburg音楽祭

先日、Salzburgへ一人旅してきました。モーツァルトの生誕地で、ミュージカル映画「サウンドオブミュージック」の舞台にもなった美しいザルツブルクは、ずっと行ってみたかった場所でした。今回友人がザルツブルク音楽祭のチケットを譲ってくれたので、演奏会と観光で数日滞在することにしました。
8日のまだ明るい夕方に到着したので、さっそく街を散策してみました。ザルツブルクは、ザルツァッハ川をはさんで新市街と旧市街に分かれていて、初めてでも歩きやすい街です。カラフルな模様を描いた花壇のミラベル庭園をぬけて、川にかかる橋を渡る時には、ホーエンザルツブルク城を望む絵のようにうつくしい風景が広がります。本で見たあのザルツブルクに来た!という感じです。音楽祭シーズンの真っ最中で、ドレスアップした人たちがそれぞれの演奏会場に向かう姿をたくさん見かけました。メンヒスベルクという岩山の上にある展望台にはエレベーターで上ることができ、ここからもザルツブルクの街並みが一望できます。右上の写真は旧市街の風景。メンヒスべルク頂上にある近代美術館にはおしゃれなカフェレストランが併設されていて、そこでご飯を食べることにしました。刻々と変わる街の景色を眺めながらのお食事は、とても贅沢な時間でした。

街も夜景になり始めた頃、メンヒルべルクから下を眺めると、、道が人であふれているのが右下の写真でわかりますか?コンサート主会場となる祝祭劇場前は、演奏会直前ですごい人だかりでした。あれだけの人が一つの空間に集まって音を聴くのだから、演奏家は独特の集中力と緊張感の中で演奏するんだろうなと思います。楽器を持って歩く人、音楽を楽しもうと会場に向かう人たちを包むこの街の雰囲気はとても素敵で、明日からの演奏会への期待が高まりました。


続きはまた後日。

2009/08/02

Leipzig


26日から一週間がたってしまいましたが、ワイマールからワルシャワまでの帰り道、マスタークラスで知り合ったピアニストたちとちょっと寄り道をしてLeipzig(ライプツィヒ)に行ってきたのでアップしたいと思います。

この地で活動をした音楽家は、バッハ、シューマン、メンデルスゾーン、ワーグナーなど錚々たる顔ぶれです。今回は、偉大な作曲家ゆかりの場所に足を伸ばすことができました。 写真は左からYuliaとElena。二人とも先日一緒に演奏会に出演しました。モスクワ音楽院の学生で、マスタークラスではゴルノスタエヴァ先生の受講生でした。前日話をしていた時に、偶然にもほぼ同じ予定で彼女たちもLeipzigに行くことが分かり、せっかくだから一緒に観光しよう!ということになりました。不思議な組み合わせですが、3人で交代でカメラを撮りあっこし、日本語とロシア語のガイド片手に、音楽家ゆかりの場所を訪れる楽しい数時間でした。

右の写真はメンデルスゾーンハウスの中庭で。今年はFelix Mendelssohn(1809-1847)の生誕200年で、彼の作品が演奏会で取り上げられることも多い年です。作曲だけでなく絵の才能にも恵まれていた彼の自筆の絵画や、安らかな顔のデスマスクを間近で見ることができ、彼の音楽に共通するうつくしさを見た気がしました。


次はシューマンの家に行ってきました。Robert Schumann(1810-1856)が、妻クララと1840年から4年間住んだ場所で、リストやメンデルスゾーンなど、多くの芸術家がこのサロンに集いました。シューマンの音楽には一度聴いただけでは理解できないような秘められたメッセージがあり、個性的で独特の魅力があります。私にとっては、演奏する喜びを与えてくれる作曲家の一人です。シューマン夫妻が頻繁に使っていたピアノが置いてあり、その時代のものがそのままの姿で残っていることに感動しました。

それから、J.S.Bach(1685-1750)が27年間カントル(ドイツプロテスタント教会の音楽監督)を務めたことで有名な、トーマス教会に行きました。ここにバッハの遺骸が眠っています。バッハ時代のオルガンは残っていないようですが、120年前につくられたものに改良が加えられ、今も残されています。天井が高く、響きのあるこの空間で、カンタータやミサを聴いてみたいなと思いました。

その後、教会を出た正面にあるバッハ博物館に行き、自筆の楽譜や残された当時の資料を見ることができました。歩き疲れたこともあり、しばらくみんなで音源をじっくり聴きました。Leipzigは新しいものと古いものが共存しながら、WeimarやEisenachとは趣が異なる都市という印象でした。音楽家にとっては、永遠に魅力のある場所だと思います。

YuliaとElenaとは、トーマス教会の後、最後に行ったニコライ教会でお別れをしました。お互いの言語も違うため、同じレベルで話せる英語でやりとりでしたが、音楽が好きという共通点が、私たちを結んでくれました。この出会いに感謝しながら、1人でワルシャワの帰路につきました。